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2020年の民法大改正に備えよう①

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契約ルールを定める民法が120年ぶりに抜本改正され、2020年から施行される。
さらに、全企業を対象にした改正個人情報保護法もスタートとなる。
ビジネスシーンを大きく変える事になる2つの法改正を解説してみました。

 

 

 


【売買】契約不適合責任で問題の解決策は柔軟になる



改正民法では、瑕疵(かし)担保責任という表現が無くなる。
現在の民法では売買の目的物に隠れた瑕疵がある場合の売り主の責任が規定されている。
改正後は、売買の目的物が種類品質、数量に関して契約の内容に適合しない『契約不適合』があった場合の売り主の責任が規定されている。

これが改正後には

売買の目的物が種類、品質または数量に関して契約の無いように適合しない『契約不適合』があった場合の売り主の責任が規定される。

 

そもそも瑕疵や瑕疵担保責任とは?

瑕疵とはなんなのか?
具体的には、
売買の目的物が通常有すべき性質・性能を備えていない事が瑕疵です。


中古車は、走ると言う性能を備えていなければいけない。
何かの不具合があって上手く走らないと、『通常有すべき性質・性能を備えていない』ので、売り主は瑕疵担保責任を負う。

当事者間で通常有すべき性質・性能の明示的な合意があれば、その合意から外れたものが瑕疵である。
しかし、それだけではなく『契約の趣旨』『社会通念』といった黙示的な合意も含めての合意から外れたものが瑕疵となる。

 

改正民法では、瑕疵があった時の責任ではなく
売買契約の無いように適合しないものを売り主が引き渡してしまったら、売り主が責任を取る『契約不適合責任』に変わる。

 

瑕疵担保責任とは?
条文上、隠れた瑕疵に関する責任とされる。
明かな瑕疵の場合、買い主はその瑕疵を前提に売買代金を考えているはずなので、瑕疵があっても、売り主に責任を負わせる必要がないと考えられる。

隠れた瑕疵と言うのは、買い主がその存在を知らず、知らない事に落ち度がない瑕疵であると解釈される。

つまり、瑕疵がある事について買い主に落ち度がある場合、隠れた瑕疵には当たらないので、売り主の瑕疵担保責任は認められない。

隠れた瑕疵でなければ

売り主はいっさい責任を負わなくてよい。
逆に隠れた瑕疵なら、100%責任を負う。

他方、契約不適合ルールでの売り主の責任の場合には、買い主に落ち度があっても、契約に適合しないものを買い主に引き渡した売り主は、契約不適合責任を負う。


契約不適合への変更でのその他のポイント

 

現民法では、売り主への責任追及は、契約解除、損害賠償請求の2本立て。
契約不適合責任は『契約の無いように適合しない場合の責任』債務不履行責任であると言うことが明確にされ
責任追及は『履行の追完請求』『代金減額請求』『損害賠償請求』『解除権の行使』の4本が法律上使用可能となる。

 

※追完請求とは契約不適法は債務不履行なので約束通りの物を履行してくれと請求する事です。目的物の補修や、代替物の引き渡しや不足分の引き渡し請求の事。


現在の民法では『契約の目的を達成できない場合に限り』契約の解除ができる。
瑕疵があっても、契約の目的を達成できる場合は、損害賠償請求しかできない。
これが改正後は『債務不履行一般と同じ要件で』契約の解除ができるようになる。

その結果、一定期間までに履行するように請求し、それが履行されなかった場合にも契約の解除が認められる。


暴力団事務所が近くにある事を知らされずに建物を買った場合、裁判所は隠れた瑕疵があり、建物の価値に影響があるとして買い主からの損害賠償請求を認める事がある。

だが、事務所があっても住む、商売すると言う契約の目的は達成できるので、通常は契約解除は認められない。

改正後は、暴力団事務所が近くにある事が契約内容に適合しないとすると、買い主は『近くに事務所の無い物件を渡してくれ』と履行請求を行うことが出来るかもしれない。

売り主がこれに応じる事ができない場合、解除できるようになる可能性がある。

 

損害賠償請求の変化

改正後の契約不適合による損害賠償責任の場合、売り主に全く責任が無いような場合には、売り主は損害賠償責任を負わない事になる。
この点では売り主が無過失責任を負う(故意・過失が無くても責任を負う)瑕疵担保責任より、契約不適合責任の方が売り主に有利かもしれない。

売買の目的物である建物に不具合があって雨漏りがする場合、改正後は建物の損害分だけではなく、契約不適合と相当な因果関係にある損害は全て賠償の対象となる。

水浸しになって壊れた家電製品の損害賠償が認められることになるかも知れず、売り主の責任は重くなる可能性がある。

 

 

民法キーワード

・契約不適合責任

現在の瑕疵担保責任に代わるもの。
改正後は売買の目的物が種類、品質、数量に関して契約内容に適合しない場合の売り主の責任が規定される。


追完請求

契約不適法は債務不履行なので約束通りの物を履行してくれと請求する事です。目的物の補修や、代替物の引き渡しや不足分の引き渡し請求の事。